2016年3月30日水曜日

SCWOG × SAO 第五話「第二のチェックポイント」

 ミカたちはシルフ領へ急ぎ、今度はルグルー回廊に向かっていた。ルグルー回廊はシルフ領の中にある古森の中にあると言われている。だが、シルフのものがいない三人は、誰もその場所がどんなところなのかを知らなかった。
「地図ではこの森の中にあるとしか書かれていませんね」
 上空から、下に広がる古森を見下ろしながらユカは残念そうにつぶやく。
「よし、じゃあ、降りよう。すぐ降りよう。もう空は十分だよ~」
 空の上だと元気の出ないミカは、ユカにしがみつきながら必死にそう言う。
「……こんなに鬱蒼とした古森だと、場所を把握していなきゃ空からじゃわからないし、降りたほうが早いかもね」
「おぉ! ユウ! いいこと言うじゃん! 人間に二足の足があるのは、地面を走るためにあるって偉い人も言ってたんもんね!」
「……誰の言葉だよ」
「もちろん私の言葉! じゃあ、いっくよ~!!」
 急に元気になったミカは、ユカから離れて地上へとグランディングし始めた。
「現金な奴だな」
「ふふふ。でも私は楽しいですよ。ユウはこのパーティー、楽しくはないですか?」
 落ち着いた声でそう言われ、ユウは急に恥ずかしさがこみあげてくる。
「……し、知らないよ。そんなの! 行くよ!」
 ユウはそう言うと慌ててミカの後を追ってグランディングを始めた。
「ふふ。ミカもユウも良い人でよかった。このイベントが終わったら、二人に彼女を紹介したいな」
 ユカは一人でそう言うと、二人の後を追ってグランディングを始めたのだった。

 シルフ領の古森の中に入ると、サラマンダー領の古森よりも若干気温が低い。というのも、風が強いために体感温度としてそう感じるのかもしれない。
「よっしゃー! やっぱり地上だと元気百倍だよね!! さっさとルグルー回廊を見つけてスタンプを押すよ~!!」
 二人が地上に降りるのを確認すると、ミカは急に走り出してしまった。
「お、おい! 勝手に暴走するなって!」
「待ってください~! ミカ~!」
 走り出したミカを追いかけて、ユウとユカも慌てて追いかけた。サラマンダー領の時のように三人で走っていると、目の前に石の塊が姿を現した。
「なんだこれ?」
「わかんない。でも、これがあると向こう側に行くには時間がかかりそうだよね」
「まぁ、そうだね」
「よし、壊そう」
「はい!?」
 あまりに短絡的な回答にユウは頭痛がした。だが、ミカは本気なようで呪文を唱えようとしている。
「おいおい、ちょっと待てって……」
「お二人とも~! ちょっとこっちに来てください!」
 岩を調べていたユカが少し離れたところから声をかけてくる。ミカとユウは顔を見合わせてから、ユカの近くに行くことにした。
 ユカの目の前には、岩に切り込みが入っている部分があった。切り込み部分からは風が吹いてきている。どうやらこの向こうに通路があるらしい。だが通常は、出入り口があったということを、ユウは知り合いのプレイヤーから聞いていた。
「これって……」
 ユウは不自然だと思い口にするが、先にユカが思いがけない言葉を発する。
「おそらく引き戸になっていますね」
「引き戸? え? これドアなの?」
 ミカはそう言うなり、隙間に指を入れて右側に力を入れる。ユウが「何か変だ」と伝える前に……。
 ゴゴゴゴゴゴゴッ
 目の前の岩はあっけなく右側に吸い込まれ、今までなかった入り口が出現した。と、同時に目の前には一体のオークが戦闘体勢で立っていた。
「……!?」
「……っ!?」
 突然のモンスターの登場に、ユカとユウは固まってしまう。第一のチェックポイントの時には、スタンプの所にしかモンスターが存在していなかったので、油断していたというのもある。
 だがどんな時でも緊張をしない人物が一人。
「モンスター覚悟~!!!」


 ミカは二人の様子を気にもせずに、たった一人でオークに立ち向かっていく。
「わっばかっ!!」
 ユウは感情では止めなければと思っても、身体がいうことを聞いてくれない。隣にいるユカも同じようだった。
「ォラァァァァァッ!!」
 ミカは剣を構えてオークを切りつける。
「グアッ! グルルルルッ」
 だが一撃ではオークのHPを少ししか削ることができない。
(あいつ一人じゃダメだ……動けボクっ)
 ユウは一生懸命に自分で自分に声をかける。だが、ユウのトラウマが脳裏に浮かび上がってしまい、余計に動くことができなくなってしまった。
(何で今になって、あの時のことが頭をよぎるんだよ……)
 ユウの姉は、あの忌々しいSAO事件に巻き込まれて死んでしまった。閉じ込められた人たちの多くは、二年後に目を覚ましたが、ユウの姉は一年もたたずにこの世を去った。その時は、もう二度とこんなゲームなんてしないと思っていたが、姉との楽しい思い出もあるゲームを棄てることはできなかった。
「ミカっ! 今、回復魔法をかけます!!」
「っ!!」
 ユウよりも先に動けるようになっていたユカが、いまだ戦っているミカに向かって回復魔法をかける。
「サンキュー! ユカ。これで元気一千倍よ! 行くわよ~!!!」
 いつの間にかオークのHPはレッドゾーンに来ていた。ユウが過去を思い出している間に、ミカが剣で攻撃をし続けていたおかげだろう。
「これで終わりだ! くらえぇぇぇぇっ!!」
 ミカが大降りに剣を振りかざすと、オークの左肩から右腹へと攻撃が当たり、HPがゼロになる。
「ぐっぎゃぁぁぁぁっ!!!!!!」
 絶叫の悲鳴を上げると、オークは目の前から消え去った。
「やったね!」
 ミカがガッツボーズをとっていると、ユウがミカの傍に近づいていく。
「ごめん。ボク……戦えなくて」
「……」
 ミカは全く気にしていなかったが、しょげているユウを見てニッコリと微笑む。
「じゃあさ、ミカ姉って呼んでよ。そしたら今回のことは許してあげる」
「え……」
 予想外の言葉にユウは言葉を失う。
「でも今、ボクが一緒に戦っていたら、あんたが怪我なんかせずに済んだのに……そんなことでいいの?」
「そんなことじゃないよ。私にとっては重要なことだもん」
 そう言われてしまっては、ユウは返す言葉を見つけられない。
「じゃ、じゃあ……ミカ姉」
「っ!!!」
 ミカは心が最高潮に震えるのを感じて、その衝動のままユウをギュッと抱きしめた。
「ちょ、ちょっと!?」
「やっぱり可愛い!!」
 ミカはそう言ってユウを抱きしめて喜んでいるが、ユウはそれどころではなかった。これがVRMMOではないにしろ、自分が女性に抱きしめられているというのを視覚としてパソコンで見るのは、多感なお年頃のユウにとっては妄想が止まらなくなってしまう。
(これがVRMMOじゃなくてよかった……)
 そんな事を思いながら気持ちを反らし、平常心を保つユウだった。

 その後、三人はルグルー回廊の中をユカの先導で無事に最奥にたどり着くことができた。そして第一チェックポイントと同じく、スタンプの前にはオークキングがスタンプを守っていた。
「これは……ゴブリンみたいな感じではなく、本気のボス戦という感じですね」
「……あぁ、けど、入り口のオークの時みたいに、もう怯んだりしないって!? おい、ミカ姉!?」
 ユウとユカが話している間にも、ミカは一人オークキングに向かって走り出していた。
「こいつは、オークキングなんだぞ!?」
「そんなのわかってるわ。だから先手必勝よ! おぉおぉぉっ!!!」
 ミカはユウの言葉を気にせずに、一人突っ込んで行き、いきなり切りつけている。
「くっ! 強い敵ほど、作戦を練ったほうが良いのに。ユカ、補助と回復魔法を頼む。ボクはミカ姉の後を追うよ」
「うん。ミカのことよろしくね」
 ユウが少し逞しくなったなと思いながら、ユカは呪文を唱え始める。力任せのミカには防御力アップの魔法を。俊敏力が高いユウには攻撃力アップの魔法を。

 ミカの暴走があったものの、三人は何とかオークキングを倒すことができた。ミカは相変わらずテンションが高いままだったが、このパーティーはこのままで大丈夫なのだろうかと一抹の不安を覚えるユウだった。

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執筆:如月わだい
企画:スカイプ通話しながらオンラインゲームWiki
ラーミア, yayoi shirakawa ,柊正一
挿絵:柊正一
原作:ソードアート・オンライン

第六話「第三チェックポイント」の連載予定は四月五日頃になります。お楽しみに!

2016年3月23日水曜日

SCWOG × SAO 第四話「第一のチェックポイント」

「ユカ、第一のチェックポイントは古森の奥であってるんだよね?」
 三人はミカを先頭に森の中を駆け抜けている。スノークリスティ―からもらったチェックシートは、すでにミカからユカに渡されていた。ミカは地図を見るのが苦手というのもあるが、落ち着きのないミカには不向きだとユウにも言われたからだ。
「はい、間違いありません!」
 走りながら地図を見るという、初心者にとっては高度な技を強いられているユカは、ミカのために頑張ってこなしている。
「この辺りはサラマンダー領だから、私についてくれば間違いないよ!」
「頼もしいです!」
「……いや、多分第一チェックポイントってチュートリアル的なものだろ? もうちょっとゆっくり行ってもいいんじゃないか? ほらさっきだって、『ここでは飛ぶ練習をしてみましょう』とか言ってる、あきらかに不自然な位置にNPCがいたし」
 二人に並んで同じように走っているユウが、後ろを振り向きながらそう言う。
「そんなのいた?」
「さすがですね。私、全く気付きませんでした」
「私も!」
「……」
 ユウは走りながらため息をつく。前しか見ていないミカに、ミカについて行くだけで必死なユカ。この二人には全くと言っていいほどゆとりがなさそうだ。
「でもさ、今さらそんなのおさらいしたって意味ないじゃん。ユウもユカも飛べるんでしょ?」
「……補助ステッキがあればなんとか飛べます」
「ボクも飛べるけど……って、じゃあなんで走ってるんだよ。時間制限はあるものの、急いでるなら飛んだ方が早くない?」
 ユウが当然の質問をする。上空を見上げれば飛んでいる他プレイヤーたちがいる。ALOの世界では、俊敏のスキルを上げるよりは飛行のスキルを上げたほうが、早く移動することができる。もちろん、俊敏力も900以上あれば、そこらの飛行スキルを持っている人よりは早いが、初心者プレイヤーのパーティーでは、飛んだ方が早いのは火を見るよりも明らかだ。
「……実は私飛ぶのが苦手で」
 と、ありえないことを言うミカ。
「おい! だったらあんたこそさっきのチュートリアル……うぐっ」
 ユウが言い終える前に、ミカがユウの首に腕を絡ませる。
「あんたじゃなくて……ミカ姉でしょ!」
「そんな名前で呼べるかよ!!」
「そんな可愛い顔してるんだから、それを利用しないなんてもったいないわよ」
「うるせー! 男に向かって可愛いなんて言うなっ」
 ミカとユウは足を止めて取っ組み合いのケンカを始めてしまう。その間にも、他プレイヤーたちは上空から追い越していく。
「ミカ、ユウ。落ち着いてください。ケンカをしていては、ここまで走ってきた意味がなくなってしまいますよ」
「う……」
「……」
 ユカの言葉で我に返ったミカは、深呼吸をする。ユウはフンッとミカに背を向けてしまうが、それでもケンカは一応収まった。
「そうだったね。私たちは絶対に一位になるんだから、こんな所でもめてる場合じゃないよね。サンキュー、ユカ」
 そう言って、ユカの肩をポンとたたく。
「い、いえ……」
 ユカは嬉しそうにはにかんで森の先を見つめる。
「でも、皆さん飛んでいますけど、本当にチェックポイントは上空からわかるものなのでしょうか?」
「え?」
「……?」
 ユカの言葉に、後ろを向いていたユウもユカを見る。
「第一のチェックポイントは、チュートリアル的な役割だとユウさんがおっしゃっていたじゃないですか」
「う、うん。現にさっき、飛ぶ練習をしようとか言ってるNPCがいたし、もっと入り口付近には魔法の使い方を練習しようって言ってたNPCもいたしな」
「そうなの?」
 全く気付いてなかったミカは、ユウの言葉にまた驚いてしまう。
(私は全速力で走っていたのに、ユウはあのスピードの中でも周りを見る余裕があったってこと……? もしかしてユウって、実はスキルの熟練度が高いんじゃ……?)
 まだこのパーティーで戦闘をしていないため、お互いの能力の高さがわかっていないというのもある。ミカは何となく心にモヤモヤしたものを感じた。
「地上を走っている私たちでも見落としてしまうようなイベントがあったわけですよね? それなのに上空を飛んでいる人たちに発見できるでしょうか?」
「あ……」
 ユウは何かに気づいたのか声を上げる。
「え? どういうこと?」
 ミカはまだ理解できていない様子で首をかしげる。
「第一のチェックポイントは、本当に初心者に向けたクエストだということです。初心者は飛行が上手ではありませんから、森の中を突っ切るしかないですよね。だからきっと、チェックポイントも古森を地上から行かないと見つけづらいところにあると思ったんです」
「すっごーい!!」
「きゃあっ!?」
 ミカは勢いよくユカに抱き付く。
「ユカってすっごく頭がいいんだね! ってことはさ、空を飛んでる他プレイヤーよりも先に第一関門を突破できる可能性が高いってことだよね」
「そ、そうです」
 ミカにギュウギュウと抱きしめられているユカを見て、ユウは少しだけ羨ましく思ったが、何でそんな風に思ったのかが理解できず首を振った。
「どうした? ユウ」
「な、なんでもないよ。それより、急ぐんだろ。早く行こう」
「おぉっ! 何かわかんないけど、ユウもやる気になったんだね。よーしじゃあ出発だーー!!」
 こうして三人はまた、猛ダッシュで森の中を駆け抜けていった。

 森の中に設置された、チュートリアル的なイベントをすべて無視し(と言っても、存在に気付いているのはユウのみだが)、三人はついに第一チェックポイントにたどり着いた。
 そこはサラマンダー領と世界樹の領の中間地点。鬱蒼とした森の中で薄暗く光っている樹の幹があり、そこにハンコが置いてあるようだった。だが、今はそのハンコを確認することができない。なぜなら三人の前には、一体のトカゲが立ちふさがっていたからだ。オオトカゲはボス級の強さだが、ただのトカゲはそれほど強いモンスターではない。ただ、見た目があまり可愛くないため女性からすると、その容姿だけで多少は、やる気がうせてしまう。
「でたなー! モンスターめ。あいつを倒せば、第一チェックポイントは完了ってことだよね」
「きっとそうです。おそらくはここでモンスターとの戦い方を学ぶチュートリアルになっていると思うので、このチュートリアルを終わらせれば完了と考えられます!」
 だがトカゲの容姿は、ミカとユカには何の効果も与えなかったようだ。
「りょーかい! ユウ! 私と一緒に前線で戦える?」
「誰にものを言ってるんだよ。当然だろう!」
「そうこなくっちゃ! ユカは後ろで補助魔法と何かあったときの為に回復魔法をすぐにかけられるようにしておいてね」
「わかりました!」
 ミカ、ユウが横並びでトカゲと睨みあい、二人の後ろでユカが手を広げた。
「じゃあ行くよ~! GO!!!!」
 ミカの掛け声とともに、二人はトカゲに立ち向かう。
「え~い! 補助魔法です!」
 ユカがそう言うと、駆け出したミカとユウの身体がボワッと暖かくなる。
「一時的に防御力を上げました。防御を気にせず頑張ってください!!」
「ありがとう! ユカ!」
 俊敏力の高いユウが先にトカゲに切りかかる。
「ぐぉっ!?」
 ユウの剣がトカゲの足に致命的な傷を負わせ、トカゲのHPが一気に三分の一減った。そして、トカゲがふらついたところを、飛翔の苦手なミカが飛び、呪文を唱える。
「これでもくらえ~~!!!!!」
 サラマンダーお得意の火炎魔法が、身動きの取れないトカゲを飲み込んだ。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
 雄たけびとともに青い光が閃光し、トカゲは消滅した。
「やったぁ!」
 ミカは空中でガッツポーズを取り、ユカはミカを見挙げてニッコリと微笑んだ。ただユウだけはため息を隠せなかった。チュートリアル的な意味合いの強い第一のチェックポイントは何とかなったものの、本当にこのままで大丈夫なのかという不安があったのだ。
彼はある程度の力を持っているものの、後ろ向きな考えに囚われてしまいがちなので本当はこういった冒険には向いていない。
 バシッ
「いって」
 いつの間にか地上に降りていたミカが、ユウの背中を叩いた。
「何すんだよ!」
「勝ったんだから、こんな時ぐらい笑顔になりなさいよね。そうじゃないと、こうだよ~」
 そう言って、ミカはユウの髪の毛をぐしゃぐしゃとしながら撫でる。
「やめろよ~。髪が乱れるだろ~!!」
「あはは。暗い顔してるからだよ。ほら、次のチェックポイントに行くよ!」
 そう言われてユカを見ると、木の幹の近くに置かれていたハンコを押したチェックシートをユウにも見せてくれる。
「あと四つ! 絶対に一番になるんだからね!」
「……わかったよ」
 ユウはしぶしぶ頷いたが、少しだけこのパーティーでいるのが楽しくなっている自分に気付いていた。ただ、今はまだ、それを認めたくないという気持ちの方が強いので、言葉にすることはないが……。

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執筆:如月わだい
企画:スカイプ通話しながらオンラインゲームWiki
ラーミア, yayoi shirakawa ,柊正一
原作:ソードアート・オンライン

第五話「第二チェックポイント」の連載予定は三月二十九日頃になります。お楽しみに!

2016年3月14日月曜日

SCWOG × SAO 第三話「アルン大広場」

 大広場に着くと、すでに多くのプレイヤーが集まっていた。ざっと百人は超えている人数だろう。
「すごいですね。こんなに人が集まるなんて……」
「それだけ、スノークリスティは人気があるってことよね」
 二人は話していても、ユウはまださっきのことを根に持っているのか、ムスッとした表情をしている。ミカが何か声をかけようとしたその時、人だかりがざわつき始める。どうやら、スノークリスティが姿を現したようだ。
「みなさん。よく集まっていただきました。まずはお礼を申し上げます」
 大広場中央に用意されていた台の上にスノークリスティ―が立つと、集まった全員に頭を下げた。クールだが礼儀正しいところが、彼女にファンが多いゆえんなのかもしれない。
「さて、みなさんにはこれからクエストを行ってもらいます。タイトルは『牧場ウォークラリー』。初心者大歓迎です。パーティーは二人から五人がベストで、途中でパーティーを変えるのもあり。クエストの内容としましては、五つのチェックポイントを周ってきていただき、一番にここへ戻ってきたものが勝者となります。チェックポイント各地には、それぞれ試練を用意させていただきました。ボス戦が必要なところもありますので、決して無理をされないようにお気を付けください」
 百人以上はいる人たちの前で、スノークリスティは臆することなく凛とした声で伝える。クエスト参加者は誰も声を出そうとはしなかった。
(これが……ALO最強プレイヤースノークリスティ。……私も絶対に、あそこまで登って見せる!)
 ミカはスノークリスティに対してほのかな対抗意識を燃やす。
「それでは、スタート!」
 スノークリスティが叫ぶと同時に、各パーティーのリーダーのアイテム欄にチェックシートが付与された。
 今まで黙っていたプレイヤーたちは雄叫びをあげて走り出す。
「ユカ! ユウ! 私たちも行くよ!」
「はい!」
「……わかってるよ」
 こうして私たちの初めてのクエストが始まった。

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執筆:如月わだい
企画:スカイプ通話しながらオンラインゲームWiki
ラーミア, yayoi shirakawa ,柊正一
原作:ソードアート・オンライン

第四話「第一チェックポイント」の連載予定は三月二十二日頃になります。お楽しみに!

2016年3月8日火曜日

SCWOG × SAO 第二話「牧場ウォークラリー 開会式」

 ALOの世界にログインしたミカたちの目の前には、少しのロード時間が終わると央都アルンの街に転送されていた。ミカは初心者ながらも、この街には何度か来たことがある。それはこの街が華やかだからということもあるが、スキルの熟練度が高いプレイヤーたちが訪れることが多いからだ。
 ミカは街の空気を思いっきり吸うと、自分の中で闘争心が沸いてくるのを感じた。
「おっしゃー!! やってやるぜ!!」
 昂ぶった気持ちのまま声を張り上げる。街を歩く他のプレイヤーが、チラチラとミカを見ているが、彼女に気にするそぶりはない。
「…おい、あんまり騒ぐなよ。一緒にいる身にもなれよ。お前も恥ずかしいだろ?」
 ユウは隣でニコニコしている、可憐な少女に声をかける。少女はミカを見て、一層嬉しそうな笑みを浮かべた。
「私は全然。ミカさんみたいな人って、私の周りにはいませんでしたから、新鮮で楽しいですよ?」
「新鮮って……」
 こんなのには慣れたくないと思ったが、ミカがこっちを見ていることに気づく。
「なんだよ」
「もう、テンション低いなぁユウは。でも、あんたって年下でしょ? 何歳なの?」
「はぁ!? いきなりなんだよ。こういう所で年齢とか聞くのって、デリカシーのない奴だな」
 少し警戒心を出して、ミカを睨みつける。もしかすると、年齢のことでこれまでもバカにされたことがあるのかもしれない。この世界は秩序正しいところだと言われていても、他種族同士での殺し合いはありなため、女性を殺すことに快楽を覚えている不埒な奴らも存在している。そう言った一部の問題プレイヤーたちは、子どもを狙っているプレイヤーたちもいるようだった。
 ミカはちょっとぶしつけすぎたかなと思いつつも、ニカッと笑う。
「悪い悪い。ユウにも私のこと、名前で呼んでほしいって思ったから。和んでもらおうと思って聞いたんだけど間違えたね。私は高校二年生なんだ。ユウはそれよりも下でしょ?」
「……そうだけど」
「じゃあさ、私のこと『ミカ姉』って呼んでよ」
「はぁっ!?」
 目の大きなユウは、その大きな瞳をめいいっぱい広げて大声を上げる。さっきはじろじろとミカのことを見ていた他プレイヤーたちが、今度はユウを見る。賑やかなパーティーだと見られていることだろう。
「何でだよ!」
「私は何とお呼びしたらよろしいでしょうか?」
「ユカは呼び捨てでいいよ。タメぐらいでしょ」
「はい。私も高校二年生です」
「じゃあ、決まりね!」
「はい!」
「いや、だからボクの話も聞けよ!!」
 ユウの声は二人には届かず、ユウを置いて歩き始める。このまま無視されるなら、いっそ今のうちにパーティーを離脱するかと、一瞬の誘惑にかられる。そもそもユウはこのパーティーに入るつもりはなかったのだ。ただ、スノークリスティがイベントを企画しているという話を聞いて、興味を惹いただけ。
「ちょっとユウ! いつまでそこにいんのよ。行くよ~。ユウの大好きなスノークリスティ様の姿も間近で拝めるし」
「なっ!?」
 ミカの言葉にユウは一瞬で頬を真っ赤にさせる。
「違うって言ってんだろ! ボクは強い奴に憧れてるだけで……」
「スノークリスティ様も罪作りな人よね。ユウみたいに小学生まで手玉に取るなんて」
「ちょっと待て。ボクは小学生じゃない! 中一だ!!」
 と、ユウはそこで自分で自分の年をばらしていることに気付く。ミカを見るとニヤニヤとした表情を向けていた。つまり、ミカの策略にはめられたというわけだ。
「へーそうなんだ。中学一年生か。よろしくね。ユウ君」
「ちくしょ~~~!!!!」
 ユウはよほど悔しかったのか、ミカとユカを追い抜いて、一人開会式のある場所に向かって走って行ってしまった。
「可愛いなぁ、ユウって」
「……ミカ、後でちゃんと謝ったほうがよろしいですよ?」
「はーい」
 そう言いあい、二人も開会式が行われる場所へと向かったのだった。

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執筆:如月わだい

企画:スカイプ通話しながらオンラインゲームWiki

ラーミア, yayoi shirakawa ,柊正一
原作:ソードアート・オンライン

第三話「アルン大広場」の連載予定は三月十五日頃になります。お楽しみに!

2016年3月6日日曜日

仮想世界で人を手伝うこと

現実世界でのボランティア活動には、ゴミ拾い・掃除から経済・食料支援まで色々あると思います。では仮想世界で人の役に立って、リアルに前向きな影響を与えるにはどうしたら良いでしょうか。仮想世界にはゴミが落ちてませんし、あったとしてもメンテナンスで自動回収されるでしょう。

NPCからのクエストを受動的に進めたり、友達に相談してレベル上げやクエ品集めを手伝ってもらったりすることが多かったのですが……

私は最近になって「人を手伝う」ことなんじゃないかな、と思いました。
例えば……
・友達に自分から話しかけてレベル上げ、アイテム収得など手伝う
・友達がダンジョンなど進めなくて困っている時、相談に乗る・協力プレイする
・他人(又は他グループ)主催イベントに参加する・手伝う
・ギルドやチームに所属して、自分から仲間に話しかける・協力プレイ
・ゲームの遊び方や楽しみ方を教える
・人を手伝えるように自分のレベル・知識・経験・能力を向上させる
・一緒に遊ぶ日時の予定合わせ・相談に乗る etc...

また、現実世界でゴミ拾いから食料支援まで全部こなす必要がないのと同じで、仮想世界でも人から頼まれたことを全部こなす必要はないし、ゲーム内のコンテンツを全て攻略する必要もない。各自が空いている時間(暇な時)やりたいだけやったら良いと私は思います。

2016年3月4日金曜日

SCWOG × SAO 質問への答え

SCWOG×SAO連載小説を読んだ方から「作中では未実装のアルフが平然とでてきますけど、その辺の解釈ってどうなってます?」とのメッセージを頂きました。

これについては
PC版リリースを記念して、新生ALOでは旧ALOの伝説の種族、アルフが実装され、初期アバターとして選択できるようになった……と独自設定してます。

SAO公式設定では
新生ALfheim Online となってから、滞空制限の撤廃による飛行時間の無制限化はされてますが
アルフ種族がリリースされたとは書かれていないようです。

以上、よろしくお願いします。

2016年3月1日火曜日

SCWOG × SAO 第一話「始まりの時」

連載小説の説明
http://scwog.blogspot.jp/2016/02/scwog-sao.html


 今、世の中は最大のゲームブームである。

2022年にVRMMO初の「ソードアート・オンライン」が発売され、その勢いは増したともいえるだろう。ただ、当時は茅場晶彦がプレイヤーたちをその空間に閉じ込めてしまい、約二年間という長期のデスゲームを強いられた者もいた。

 彼らはもちろん、彼らの家族や仲のいい者たちは、「こんなゲームがなければ……」と恨んでいた。だが世間は無情にも、彼らが眠っている間に新しいソフトは開発され、そして販売。ゲーマーたちによってソフトは購入され、ゲームブームが衰えることはなかった。

 デスゲームを強いられていたプレイヤーたちもまた、全員ではないにしろ現実世界に戻ってもしばらくすると、VRMMOの世界が忘れられず、ダイブするという始末。二年間心配をしていた家族や仲のいい友だちを押し切ってでも、その世界にはまる者が続出しているというのが今だ。

現在、「ソードアート・オンライン」「アルヴヘイム・オンライン」「ガンゲイル・オンライン」がすでに販売されてから時が過ぎ、待望だったVRMMOのパソコン版が遂に発売された。
 これは画期的なもので、チャットをして仲間を集め、一緒にログインをして、その世界を冒険できるというもの。ニコ生を利用して仲間を集める者もおり、ゲーム初心者には特に嬉しい製品だった。



 そしてここに、購入したばかりのパソコンを担いで走る一人の女子高校生がいる。彼女の名前は安心院ミカ(あじむ みか)。公立高校の進学コースで日々勉強に追われているのだが、一日の勉強のノルマを達成すれば、その他の時間は自由にしてもいいという母親の言葉通りに、ノルマを達成するとすぐにゲームに時間を費やした。

 昨日、テストの返却があり五教科のうち四教科が100点満点。さらに残りの一教科は97点という奇跡にも近い高得点を出したので、母親が娘に新しいパソコンを購入してあげたというわけだ。
今、彼女が抱えているパソコンは、最新型のものでスペックが非常に高い。高校生のお小遣いでは決して買うことができない高級パソコンでもある。

「今日は仲間をゲットして、絶対に一番になるぞ!!」
 ミカは抑えきれない気持ちを言葉にして、さらに走るスピードを上げた。



 これからミカがしようとしているゲームは、「アルヴヘイム・オンライン」のパソコン版。パソコン版ならきっとVRMMOよりは安全と、ゲームの知識のない母親が認めてくれたものだった。

 先程パソコン版の説明を少ししたが、どうしてこれが発売に至ったのかというところにも触れておこう。VRMMOでは当然のように自分の言葉で会話をして冒険をすることができた。これまでのゲームとしてはあり得ない要素。だが、そのあり得ないことを可能にし、ゲーマーたちを魅了してしまった。
 パソコン版になったときも、その部分は外せないところだと制作側で喧々諤々とし、その結果オンラインチャットで自分の声を使いゲームをすることを可能にしたのが、このパソコン版のゲームなのである。
 そして、「アルヴヘイム・オンライン」通称ALOでは、ALO通話グループが形成され、オリジナルキャラクタの一人がリーダーになり、SCWOG Wikiが開設される。

 ミカは実生活でも常に一番になりたいという欲求を抱えた女の子。ゲームの世界でもそれは同じで、自分がリーダーとして人を集めようと心に決めていた。彼女にとっては、誰か他の人がリーダーのグループに入る……という考えが、そもそもないのかもしれないが。

 ALOでのミカの名前は、現実世界と同じく「ミカ」。キャラクタは全て妖精になるのだが、ミカはサラマンダーという種族を選んでいる。
サラマンダーは初期設定から弱いながらも炎系の魔法が使える。もちろんスキルをアップさせれば高度なものも使えるが、まだまだ初心者のミカのスキルは高くはない。
 ただ、引くことを知らない性格のため、ゲームの中でも撤退をすることもなく勢いだけで敵を蹴散らしてしまう瞬発力が、現実のミカからゲームのミカに引き継がれていた。



「ただいま~」
 ミカは玄関でそう言うと、母親が顔を出す前に二階の自分の部屋へと直行する。階段を駆け上がっているときに、母親の声が聞こえたような気がしたが、今はかまっている場合ではない……とミカは考え返事をしなかった。



 自分の部屋に着くと、鞄をベッドに放り投げて、買ってきたばかりのパソコンを箱から取り出し、セッティングをして電源を入れる。
 一昔前に比べると、パソコンの起動時間は驚異的に早くなったのだが、こんな風に楽しみがある時には、それでも長く感じてしまう。
「あぁ~楽しみすぎて、手元が震えてきちゃったよ。ふふふ~今回はあのスノークリスティがイベント主宰をするんだもん。これは名前を売るチャーンスだよねっ!」
 そう言いながら、起動したパソコンでニコ生にアクセスし、SCWOG説明会を開催する。ミカはマイクをつかんで、息を吸い込んでから話し始めた。
「ALOで遊んでいるみんな! 私はサラマンダーのミカ。今日開催される、あのスノークリスティ主催のイベントに参加しようと思ってるんだ。私と一緒にパーティーを組んで冒険する人を大募集だよ! 一緒に楽しい冒険をしよう!!」
 ミカが言い終えると、緑のランプが二つ付き、誰かがミカに反応したことを示す。ミカはガッツポーズを取りながら、その二人に発言権を与える。
「はじめまして。アルフのユカと申します。回復魔法を得意としているので、攻撃系のスキルは高くないのですが、私もご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
 白いワンピースに、黄金色でロングヘアの綺麗なキャラクタが目の前に現れる。声のトーンはとても優しい響きで、聞いているだけでも癒されそうだった。
「もっちろん! 回復スキルも重要だからね。力の強化とか補助系のスキルもあるの?」
「はい、ございます。……といっても、私はまだ初心者なので、どれもそれほど強力なものは使えないのですが……」
「あはは。大丈夫。私も初心者だから。同じ同じっ! 安心して、私についてきてよ!」
「!! ありがとうございます!」
 ユカは男女問わず魅了してしまいそうな、微笑みを見せる。その表情に思わずドキリとしてしまいそうになり、その感情をごまかすためもう一人のキャラクタに声をかける。
「で、君も私と一緒に冒険したいって感じ?」
 今まで黙っていたのは、可愛らしい童顔の男性キャラクタ。黒い装束を身にまとい、ちょっとだけ生意気そうな表情をしている。
「別にそうじゃないよ。スノークリスティが本当にイベントを立ち上げたのかなって思って……。あ、ボクはスプリンガンのユウ」
 ユウは少しムスッとした感じの声で話す。地の声がそうなのか、本当にムスッとしているのかは、わからない。
「あぁそれは、本当だよ。今日の十六時から開会式があるっていう情報があって、そこでイベントの説明をするのがスノークリスティみたいね」
「……その情報、本当なのか?」
「なぁに? ユウはスノークリスティのファンなの?」
「っ!? ち、違う!」
 ちょっとムキになったユウは、自分で肯定していることに気付いていないらしい。先程から何度も出てきている「スノークリスティ」とは、ALO最強ユーザーとして知られる女性。ウンディーネ唯一のユニークスキル保持者でもある。クールな彼女だが、男性ファンはかなり多い。
「あんなミーハーと一緒にするな。ボクは真剣に強くなりたくて……」
「へぇ~。強くなるのが目的なんだ。じゃあ、私と一緒だね! よーしじゃあ、今回はこの三人で冒険に出よう! きっと楽しい冒険になるよ!!」
「え、おい。ボクは別にパーティーを組むなんて一言も……」
「わー! とても楽しみですね。よろしくお願いいたします!」
「ボクの話を聞け~!!」
 ユウの声を無視してミカはパーティーのセットボタンを押した。これにより、ミカがログインボタンを押すと、二人は強制的にログインすることになる。
「それじゃあ二人とも準備はいい? 大暴れするわよ~!!!」
 こうして、ミカ、ユカ、ユウの三人はALOの世界へとログインしたのだった。

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執筆:如月わだい
企画:スカイプ通話しながらオンラインゲームWiki
ラーミア, yayoi shirakawa ,柊正一
原作:ソードアート・オンライン

第二話「牧場ウォークラリー開会式」の連載予定は三月八日頃になります。お楽しみに!